まずはこちらのサイトをご欄いただきたい。
https://www.instagram.com/kururi_tomita
これは、私の作品を公開しているinstagramのアカウントだが、見ていただけるとわかるように、投稿数はわずか20。
なぜこんなにも作品数が少ないのか?
これは皆さんも写真などを投稿するとき気にしているポイントかもしれないが、やはり写真映えするかどうかは非常に重要で、パッとしない作品を載せるのには抵抗があるのだ。
自分が見てこれなら多くの日とに見せてもはずかしくないと思うものを載せたいと思うはずだ。
私も同じだ。おそらく、他の画家さんの多くも同じ考えの人は多いはずだ。
だから、描いた作品の中から皆さんにお見せできるものを厳選していて、結果このような投稿数になっている。
試しにここにInstagramにのせていない作品をのせようと思うが、正直相当はずかしい。こんなクオリティのものをのせて果たして画家と名乗っていいのかという気すらする。
しかし、私の言いたいこと、つまりまともな作品がほとんどないということを強調するためにお見せしようと思う。 ↓↓↓↓↓
いかがだろうか。まぁなんとなく雰囲気はわからなくもないが、完成度が低いと感じられないだろうか。少なくとも自分はそう感じる。
ちなみにこのような、未投稿の作品を全部あわせても 今までの作品数の合計は50にも満たないだろう。他の作家などと比べると圧倒的に少ないといえる。
その中から作品として皆さんにお見せできるものを厳選していて、結果このような投稿数になっているのだ。
こんなわたしが日本画家と名乗ってよいのか?
そんな疑問をもたれるかと思う。だから、今日はわたしの作品数が少ない理由をお話したいと思う。
長くなるがお付き合い願いたい。
これは、自分の絵描きとしての本質、根底のスタイルに関わる大切な問題なのである。
そもそも描きたいものが少ない
私は旅の風景を描く画家だ。というより、旅の風景しか描けない。
もっといえば、旅の風景だったらなんでもいいかというとそうではなく、自分の心の琴線にびびっと触れたもの、かつそれを、絵であらわしたいと思ったものしか描けない。
さらに、完成度の高い作品を、となると、その風景がとても自分の心と目に深く鮮やかに染み込んでいた場合に限られる。
記憶というのは不思議なもので、いくら時間が経っても色褪せない風景がまれにある。
そういう対象は非常にかきやすい。
しかも、その風景とは往々にしてたまたま、意図せず出逢うのだ。
この詳しい体験談もとても重要な話なのだが長くなるのでまた別の記事でお話したいと思っている。
こうして書いてみると、自分でもなんとも面倒くさい絵描きだと思う。
街並みとか川とか山とかなにかひとつのモチーフが決まっているわけでもなく、私は常にモチーフをさがす旅にでなければ描くという出発点に立つことすらできないのだから。
単純に時間がかかる
原因1 修正が多い
前回の投稿でも触れたが、私は日本画をきちんと習ったわけではないため、失敗も多い。
たとえば、最近だとこの作品をみてほしい。
上部の空の色面に注目してほしい。
実は、この部分は途中でひび割れ、なん十層にも重ねた色の層をぜんぶはがし1からやり直している。
ひび割れる前はもっと厚く空色が塗ってあった。
だからまだ未完成なのだ。
この失敗では、数千円の絵の具と何十時間を無駄にすることになった。
もう一つ厄介な問題がある。
それは、
乾く前と乾いたあとの色味や質感がまったく変わってしまう。
という事件だ。これは絵の具に対しての水分量が多かったり、被膜性の高い顔料を使った場合起こる。
こんなはずじゃなかった、と色を修正する場合も多く、無駄な工程をはさんでしまっていると思う。(比較画像があればよかったのだが、撮影していなかった。)
原因2 厚塗りの技法
私の日本画制作では顔料の凹凸による色の深みをだすため油絵のように厚塗りをする。
また、作品によっては形を壊しては整え、また壊して、という作業を繰り返し、少しずつ印象を整えていくため、完成に行き着くまで何十、何百回と絵の具を重ねることになる。
だから小品であっても制作時間は100時間を余裕で越える。
だから描いてはいるがなかなか皆さんにお見せできないのである。(展覧会に出すためにお見せできないこともひとつの要因ではあるが。)
スケッチのほうがやりやすい。それでも日本画にこだわりたい。
皆さんすでにお気づきだろうが、冒頭でお見せした作品はスケッチつまり写生だ。日本画ではない。 そう、実はわたしの現時点での作品の9割はスケッチだ。日本画家と名乗っているにもかかわらず、だ。
わたしが日本画を本格的にはじめたのはおよそ一年前で、実は、学生時代との作品をあわせても現時点でわずか五点の日本画しか完成させていない。
実際わたしの制作スタイルにスケッチはもっとも適しているのだ。
なぜなら前の記事でも書いたが、私は、旅のなかで出会った一瞬の体験そのものを描いているため、リアルタイムで目の前にある風景と向き合い、描写していくやり方があっているのだ。そして、単純に日本画よりも制作時間が短く、たくさんの作品ができるのだ。
しかし、スケッチ制作にも弱点がある。
まず、画材の制約。
水彩や鉛筆しかつかえないのでどうしても色がにぶくなる。本当はその場で日本画にするのが一番よいのだが、外で日本画の画材を広げるわけにはいかない。
次に時間や場所の制約。
これが自分の中ではかなりの難点だ。 風景を目の前にしてその場で描く。それにはさまざまな障害があるのだ。 これについても別の記事で詳しく書きたいと思うが、スケッチは往々にして未完成で終わるものも多い。だから、作品として完成と呼べるものが少ないのだ。
だからこれは腰を据えてしっかり作品化したいと思ったら、やはり日本画に、という話になってくる。
スケッチするように日本画を描きたい
だから、わたしはこう思う。スケッチのもつ一瞬の印象をとらえる感覚を持続させたまま日本画にも取り組む。そのためにも、わたしはこれからもスケッチをたくさん描きつつ、日本画制作にも全力で取り組みたい。
描きたいものは少ないし、スケッチは難しいし日本画はもっと難しい。それでもわたしは日本画家として表現することをやめたくはないのだ。