挑戦しつづける力
本展覧会は、71歳から105歳までの現役で創作活動を続ける女性アーティストの展示である。
表題にある、挑戦しつづける力ー。
この「つづける」というところが本展のポイントだ。
この展覧会では、まず普段あまり自分が男と女ということを意識しないが、やはり性差を意識するのだ。
ジェンダーフリーが叫ばれる現代において、1世紀ほど前の彼女たちの生きた時代はどれだけの苦難だったか。
展示をしたいとギャラリーに行けば、女性は受け付けないといわれ、体力的にも男性より劣ることが多い。
そのなかで50年も創作を続けた彼女たちの生き様は、作品を見ずとも、すでにかっこいいのだ。
理不尽や苦難にさらされながら彼女たちがつくりつづけることができた理由はなんだろうか。
私は展示をみていく中でひとつの応答を受け取った。
それは、
自分が自分であるため
という非常なシンプルな訴えだった。
しかし、ただの応答ではない。この言葉は彼女たちの作品においては、非常に強い訴えであった。
彼女たちの放つエネルギーは、そう、命がけに見えたー。
50年以上という非常に長いキャリアをもつ彼女たちは、
酸いも甘いも経験し、熟年だがみずみずしく、彼女たちの作品や生き様を見れば、
ある人はとても励まされ、ある人は刺激を受けるだろう。
この展覧会は、
転職でも、夢を追うでも、なにか新しいことを始めようとしているが、なかなか一歩を踏み出せない人、
あるいは、夢に向かって歩き続け、結果や芽がまだ出ず、ギリギリのところで踏ん張っている人たちへの、エールだ。
一方で、
そして、頑張る女性たちの、アーティストの立たされている現状、ー。
情熱と苦心を知るという意味で、あらゆる人にも見て頂きたいのだ。
《美しいブルー》ミリアム•カーン
原点
女性たちは、いずれも社会や自然に関心をもち、自分に正直に、現実と夢の狭間で常に闘い、挑戦し続けている。
日常の織物や衣類の布地から着想を得るヌヌンWS。
故郷の自然の様子を見つめたエデル・アドナン。素朴で、なんとも落ち着く作品群。
自分のいる地平を自覚し、そのうえで彼女たちの創作は、各々の体験からはじまっている
ロビン・ホワイト 奥から 《夏草》 《大通り沿いで目にしたもの》
故郷の文化、問題意識ー。性差、人種差別、迫害、民族問題、道徳、教育ー。彼女らはそれぞれのルーツから各々が自己を、社会を見つめ、
自分に正直にいようと、逞しくあろうとした。
アルピタ・シン 《アシュワメーダ》
エネルギーに満ちた作品群は、映像を見ることでより沁み入るー。
インタビューに答える彼女たちの姿は明朗快活で、非常に頼もしくうつるのだ。
彼女たちには共通する精神があった。
それは、アートに命ある限りの情熱を傾けているということだ。
そして、彼女たちは、心に湧き上がる言葉にならない叫びを携え、今もこのコロナのパンデミックにおいても、
広くやさしく、そして丈夫な心で、
また、その心で生み出すアートで世界を横断しようとしている。
追放された壁紙 ベアトリス・ゴンザレス
彼女たちの方舟に今なら、私も乗れるような気がするー。、
進むか、退がるか。
だったら進もうじゃないか。自分らしく。大丈夫、自分を信じて堂々と続けよう。
アナザーエナジー展は、そんな勇気をもらえる場所なのだ。