ホルベイン、シュミンケ・アカデミー、W&Nプロの発色を比較してみた

以前の記事にも書いたが、わたしは日本画制作において岩絵の具の使い方に難しさを感じている。

その理由が

・天然の材料からつくられるため、色が限られ る

・顔料の粒同士がうまく混ざらないことがあり、混色に適していない

・色の濃い、薄いを変えるために膠と水の割合をいちいち変えなければならず、絵の具をのせるまでの過程が面倒

などである。

一方、その難点を克服しているのが水彩絵の具だ。

水彩絵の具は、感覚を瞬間的にあらわすような技法がやりやすい。

その理由として、

・水の分量を変えるだけで手軽に細かいニュアンスの調整ができる

色数が多い

混色、重ね塗りがしやすい

下地づくり絵具づくりなど、特別な準備が必要ない。

などが挙げられる。

だが、このようなメリットがあったとしても、岩絵具の発色と粒子のもつキラキラとした質感に魅せられている以上、

岩絵具もなんとしても使いたい。

ならば、このふたつの材料をどうにか融合できないか試してみることにした。

ホルベイン水彩チューブ絵の具を併用した結果

はじめに自宅にあった、ホルベイン社の透明水彩絵具12色セットを使って試してみた。

まずは下記の二つの画像をご覧いただきたい。

※ともに加工なし

これは、ある風景画の一部だが、空のあたりをよく見てほしい。

前者は岩絵具のみで塗った画面で、後者はその上にうすい橙色の水彩絵の具を重ねた画面である。

くらべてみると、後者のほうが少し色がくすんだような感じになっていることがお分かり頂けるだろうか。

以前、日本画材店で岩絵具と他の画材の併用について聞いたところ、水彩絵の具など他の顔料を上から重ねた場合、岩絵具の発色を殺すと言われた。

できるだけ併用はせず、したとしても岩絵具の下地として使うのよいというアドバイスを頂いた。

その通りの結果になってしまったわけだ。

ならば、と考えた結果、

岩絵具にできるだけ近い発色の良い高級な水彩絵の具を使ってみることにした。

そこで今回、購入して実際に試したのはこちら。

シュミンケ ・アカデミー 24色セット

ドイツの最高級水彩絵の具メーカフーシュミンケの『アカデミーシリーズ』24色の固形水彩。最高級顔料を使用したシュミンケ「ホラダム」に次ぐクオリティとして、開発された水彩絵具セットだ。

本当は最高級の発色とされるシュミンケホラダムを使いたかったが、ホワイトの色が見つからなかったため、こちらのシリーズを試してみることにした。

ウィンザー&ニュートン プロフェッショナル ウォーターカラー 24色セット

こちらは、英国王室御用達の最高級水彩絵具とされるウィンザー&ニュートン社による純度・品質・信頼性ともに評価の高い水彩絵具セットだ。

どちらもかなり高級水彩絵の具として名高いもので、かなり値が張った。

果たしてその結果は、、。

シュミンケ・アカデミーを使った場合

下の画像の空の真ん中あたりに注目して頂きたい。

ここでは、空の霧の部分は、「岩白」という顔料で、粒子の大きいものを使用して白色にしていた。

そのため、粒子と粒子の間に、隙間ができやすく、色の層をつくるのが難しかった。

そこで、その隙間を埋めるように上から白の水彩絵の具をのせようと考えた。

そこに、さらに鮮やかな白にしたくて胡粉のうえにシュミンケの白色をのせてみた画像だ。

その結果、最初はある程度鮮やかさがあったが、乾くと少し鈍い発色に落ち着いてしまった。

ウィンザー&ニュートンプロフェッショナルを使った場合

同じように、空の霧の部分に今度はウィンザー&ニュートンの白をのせてみた。

すると、乾いたあともシュミンケよりも白が鮮やかさが変わらず、発色のよさを感じた。

さらに、岩白のざらざらした粒子のなかにあって、より質感の差をくっきり感じさせつつ、発色の良さで浮きもしない、絶妙なバランスで溶け込んでくれた。

綺麗に発色もして、かといって被膜性がすごく強いわけでもなく透明感もあり、水の分量を調節し、綺麗にぼかせるようになっていた。

白がうまくいったので試しに他の青緑系の色も加えると、より深い色あいの効果が生まれ、他の色を混ぜても発色が鈍くならないことに感動した。

まとめると

このように、今回は岩絵具でマチエールをつくったうえで、水彩絵の具をのせてみた。

検証結果をまとめると

ホルベイン透明水彩絵の具 ⇒被膜性はあるが、にごりが強い

シュミンケ・アカデミー ⇒透明感はあるが、発色は少し鈍い

ウィンザー&ニュートンプロフェッショナル ⇒透明感と鮮やかさと程よい被膜性を兼ね備えた発色

結果、この3つの中だとウィンザー&ニュートンが、岩絵具の上にのせても濃く鮮やかな色味が出て濁りがすくなく、使いやすかった。

しかも、シュミンケホラダムよりも安価なのでありがたいことだ。

ただ、これはあくまでも岩絵具を厚塗りした画面、深い色彩のうえに重ねた結果であり、単体で使用した場合の感想とは異なるかもしれない。

とにもかくにも、これで少し水彩絵の具と岩絵具の併用の道がひらけてみた。

今回は岩絵具の上に水彩絵の具をのせるという順番で試してみた。

次は、水彩絵の具である程度描いてから仕上げにマチエールとして岩絵具をのせる方法もやってみたい。

こちらもうまくいけばコストや時間を抑えて理想の画面をつくれる可能性があると考えている。

次回の新作でまた試して結果をお伝えしていきたいと思う。

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