スケッチは練習ではない!風景スケッチをそのまま作品に仕上げる方法

スケッチは、短時間でささっと印象を描ききる通常の絵画よりも時間もお金もかけず手軽に取り組める技法だ。

そのスケッチが作品として上手くいくとき。 それは主に2つのパターンがある。

パターン1

まずは、単純に、

時間だ。

絵に費やす時間を多くかけた場合だ。納得いくまでかききった場合うまくいくことが多い。

だだ、ひとつ注意することがある。

それは、色を重ねすぎてにごって失敗することだ。

たとえばこの作品をみてほしい。

これは《夏に揺れる》という作品で、初夏の爽やかな風の吹きわたる竹林を描いたものだ。

しかし、これは、描きこみをするなかで最終的にこのような作品になった。

いかがだろうか。この2作品を比べて、皆さんはどちらのほうが良いと思うだろうか。

私は、圧倒的(かきこむ前の絵のほうがよかったと思う。

背景の青が重ねれば重ねるほどくすんでいき、初夏の爽やかな色合いがまったく消えてしまったと感じる。

原因はなにか。

それは、自分のなかで完成イメージが甘いまま、進めてしまったためだ。

むやみやたらに描きこめばいいという話ではなく、自分の表現したいイメージを明確にして、そのイメージを深化させていくことが大切なのだ。

なにを表現したいのか、どのような色合いで絵を完成させるのかはよく考え、

絵の後半になればなるほど、慎重に進め、時間をかけて最後までそのイメージを崩すことなくかきこむことができれば、スケッチは間違いなくうまくいく。

ちなみに緻密な描きこみをしてうまく、いった例はこちらだ。

これは、最初から描きたいイメージをが頭のなかに明確にあったためにしっかり完成までもっていくことができた。

制作時間は15時間ほどで、そのうち6時間はスケッチに費やしている。これは、何時間もモチーフを前にしてある程度描きこみができたからこそ成功した絵だ。

パターン2

反対に、本当に少しの時間しかスケッチできなくで、うまくスケッチができる場合がある。

それは、その描く風景そのものが自分にとってすごく描きやすいものであった場合だ。

わかりやすく言うと、なんとなくあんまり苦労しなくても描けちゃうもの。

例えば、山は描けるけど、水は描きにくいとか、花は描けるけど木は描きにくいとか、そういう感じだ。

そういう、自分の得意なものをスケッチのモチーフに選んだ場合、あまり時間をかけなくてもそれなりに描ける。

さらに、自分の心や記憶によく染み込んでいるものだったりするから、時間が経っても、イメージが色褪せずそのままかきこむことで完成させることができるのだ。

実際、私はこの風景スケッチでそれを実感した。

これは、青森の奥入瀬渓流の自然林を描いたものだ。

わたしは、これまで木々や山の風景を多く描いてきたので、この風景を目の前にしたとき、心にすっと入ってきて、不思議と自分の筆がするするとのるのを感じた。

モチーフ探しというのは、難しくて自分が描きたいと思っても自分が描きづらいものもあるのだ。

だから、自分が描きたいと思い、かつ、

風景と自分との相性がよいほど、あまり時間や苦労をかけずともうまくいくのである。

実際、この作品はかなり自分のなかでうまくあったと思うが、その場でスケッチできたのは 30分ほどで、あとは資料などを参考に自宅で加筆している。

ただ、このパターンには弱点がある。

それは相性の良いモチーフとの出逢いは、まったくの偶然によるもので、いつもいつもそういう風景と出会えるわけではない。

つまり、特別なパターンなのだ。

以上、大きく二つのパターンを、紹介した。

基本的にはパターン1で、ひたすら描くのが確実にうまくいく方法ではあるだろう。

しかし、自分と相性が悪いモチーフであった場合、描くのが難しかったり、最悪絵を描くのが嫌いになってしまうかもしれないので、あまりうまくいかないときは潔くその作品を諦めるのもひとつの手ではある。

そして少しずつパターン2のような、自分に合ったモチーフをたくさん描けるようになると、きっと楽しくなってくるはずだ。

そのためにも日々、心の向く方へぜひ気軽に写生の旅に出て、たくさんの風景と出逢うことが大切なのだ。

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