《青い森 》2019.8

F4号 水彩スケッチ

青森は、北の国の厳しい環境の中にありながら、豊潤な自然がその厳しさを覆いつくすほどのやすらぎの土地だった。

なんとも奔放で、なにも気を張ることのない。自然体という言葉がぴったり__それでいて不思議な優しさに満ちた土地だった。


隣あうもの同士、それとなく守り、助け合い、寄り添おうとしている。

風も、緑も、木々も、光も。

光は明るいが、眩しくはない。目に優しい。

風は常に吹くが、柔らかくそよそよさらさらと頬をなでる。

まるで、大きな母親の胎内にすっぽり包まれているような不思議な感覚。

おおきな力に守られていると__。

それは、青森という土地が紡いだ縄文の系譜ではないだろうか。

内と外を分けようとする弥生時代以降の文化とは性質を異にする、何千年と紡いできた三内丸山の、「平和のムラ」。

老若男女だれであろうと、この土地のものでなくても、みんなひとつの「ムラ」の中で奔放に、自然に思いやり、暮らすことのできる場所___


わたしは、唐突にここ奥入瀬の森に、縄文の時代から今に至るまで生き続ける青森のムラの系譜をみた。

なでるように、寄り添うように、暖め会うように、呼応し、そよぎ、うたう。

その森の姿に___。

空を覆う青く繁る広葉樹。林床を深く覆いつくすシダ。

ゆっくりと深く息を吸いながら流れるように、泳ぐようにあるく。

それは、どこまでも青い森だった。


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