《郷愁の灯》F4 紙本彩色

たまたま情報誌の表紙で見た写真の風景が忘れられなかった。

イングランドの小さな島。ウイスキーの醸造所がひしめくアイラ島。潮の匂いと、もの寂しく、冷たい空気と海風。その夕暮れ。岸壁の醸造所は海に向かって静かに立つ。

夜を告げる暗い空に向かって細くそびえる煙突。窓からもれ出る小さな灯。

何故だろう。

知らないのに知っているような風景。

行ったことがないのに懐かしい風景。

波の音と、潮風と、夕焼けに溶ける水平線が私のからだに灯って離さない。

この身はどこにも出ていないのに、わたしはまるでその海岸線に立った気持ちでいた。

それは、私のどこか遠い記憶の郷愁の灯が、アイラの風景に重なったからかもしれない。

もし、この先、アイラの地に降り立ったらきっとこの風景を見つけるだろう。

そして、あの感覚は錯覚ではなかった、とそう思うだろう。根拠はどこにもないが、私はそう確信するのだ。

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